法定相続人とは?誰が相続人になるのか・遺留分・代襲相続まで詳しく解説
相続手続きで最初に確認しなければならないのは、
「誰が相続人になるのか」
という点です。
相続では、預貯金や不動産、自動車、株式などの財産を誰が引き継ぐのかを決める前に、まず法律上の相続人を確定する必要があります。
ここをあいまいにしたまま手続きを進めてしまうと、あとから別の相続人がいることが分かり、遺産分割協議書の作り直しや、銀行手続きのやり直しが必要になることがあります。
特に、次のようなケースでは注意が必要です。
長年連絡を取っていない兄弟姉妹がいる場合
前婚の子がいる場合
認知された子がいる場合
養子縁組をしている場合
子どもが先に亡くなっていて孫がいる場合
兄弟姉妹が先に亡くなっていて甥・姪がいる場合
婚姻関係のない内縁の配偶者や交際相手がいる場合
身寄りがないと思われる叔父・叔母の相続が発生した場合
遺言書がある場合
相続人の調査は、単に「家族の名前を思い出す」作業ではありません。
戸籍をたどり、法律上の親族関係を確認し、相続人になる人とならない人を整理していく作業です。
このページでは、法定相続人、相続順位、代襲相続、遺留分、遺言との関係、相続人調査の方法について、具体例を交えながら解説します。
法定相続人とは
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。
亡くなった方のことを「被相続人」といいます。
被相続人が亡くなったとき、その人の財産や権利義務を引き継ぐ立場になる人が相続人です。
ただし、親族であれば誰でも相続人になるわけではありません。
法律上、相続人になる人には順番があります。
基本は次の考え方です。
配偶者は、常に相続人になります。
配偶者以外の血族は、順位に従って相続人になります。
第1順位は、子です。
第2順位は、直系尊属です。
第3順位は、兄弟姉妹です。
ここでいう配偶者とは、法律上婚姻している夫または妻のことです。
内縁の配偶者、婚姻届を出していない交際相手、いわゆる愛人関係にある人は、原則として法定相続人にはなりません。
配偶者は常に相続人になる
亡くなった方に法律上の配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人になります。
ただし、「常に相続人になる」といっても、配偶者だけが相続人になるとは限りません。
子がいれば、配偶者と子が相続人になります。
子がいなければ、配偶者と父母などの直系尊属が相続人になることがあります。
子も直系尊属もいなければ、配偶者と兄弟姉妹が相続人になることがあります。
つまり、配偶者は常に相続人になりますが、誰と一緒に相続人になるかは、家族関係によって変わります。
第1順位 子がいる場合
第1順位の相続人は、子です。
亡くなった方に子がいる場合、原則として子が相続人になります。
この場合、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。
たとえば、亡くなった方に配偶者と子が2人いる場合、相続人は配偶者と子2人です。
父母が存命でも、兄弟姉妹がいても、子がいるため父母や兄弟姉妹は相続人にはなりません。
法定相続分は、配偶者が2分の1、子全体で2分の1です。
子が2人いれば、子1人あたりは4分の1ずつになります。
例
亡くなった方:夫
相続人:妻、長男、長女
法定相続分:妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1
ここで重要なのは、「子」にはいろいろな立場の子が含まれることです。
実子
養子
前婚の子
認知された子
これらは、法律上の親子関係があれば相続人になります。
一方で、配偶者の連れ子は、当然には相続人になりません。
たとえば、再婚相手に前婚の子がいて、その子と養子縁組をしていない場合、その連れ子は相続人にはなりません。
連れ子に財産を残したい場合は、養子縁組や遺言書の作成を検討する必要があります。
第2順位 子がいない場合は父母・祖父母
亡くなった方に子がいない場合、第2順位の相続人として、父母などの直系尊属が相続人になります。
直系尊属とは、父母、祖父母、曾祖父母など、自分より上の世代の直系の親族です。
ただし、父母と祖父母が両方いる場合は、亡くなった方に近い世代である父母が相続人になります。
父母がいる場合、祖父母は相続人になりません。
例
亡くなった方:子なしの夫
相続人:妻、父、母
法定相続分:妻3分の2、父6分の1、母6分の1
配偶者と直系尊属が相続人になる場合、法定相続分は配偶者が3分の2、直系尊属全体で3分の1です。
父母が2人とも存命であれば、父母は3分の1を2人で分けます。
第3順位 子も父母もいない場合は兄弟姉妹
亡くなった方に子がいない。
父母や祖父母などの直系尊属もいない。
この場合に、第3順位として兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が相続人になるのは、子や直系尊属がいない場合です。
そのため、兄弟姉妹が相続人になるケースは、相続人調査が複雑になりやすいです。
なぜなら、亡くなった方本人の戸籍だけでなく、父母の戸籍、兄弟姉妹の戸籍、亡くなっている兄弟姉妹がいればその子である甥・姪の戸籍まで確認する必要があるからです。
例
亡くなった方:子なし、父母死亡
相続人:妻、兄、妹
法定相続分:妻4分の3、兄8分の1、妹8分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1です。
兄弟姉妹が2人いれば、4分の1を2人で分けます。
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合は、血族相続人だけで判断します。
亡くなった方に子がいれば、子が相続人になります。
子がいなければ、父母などの直系尊属が相続人になります。
子も直系尊属もいなければ、兄弟姉妹が相続人になります。
例
亡くなった方:独身、子あり
相続人:子
法定相続分:子がすべて相続
例
亡くなった方:独身、子なし、父母存命
相続人:父母
法定相続分:父2分の1、母2分の1
例
亡くなった方:独身、子なし、父母死亡、兄弟姉妹あり
相続人:兄弟姉妹
法定相続分:兄弟姉妹で均等
法定相続分とは
法定相続分とは、民法で定められた相続割合のことです。
ただし、法定相続分は「必ずこの割合で分けなければならない」という意味ではありません。
相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできます。
たとえば、相続人が妻と子2人の場合、法定相続分は妻2分の1、子全体で2分の1です。
しかし、相続人全員が合意すれば、
妻がすべて相続する
長男が自宅を相続し、長女が預貯金を相続する
特定の相続人が多めに取得する
という分け方も可能です。
ただし、相続人全員の合意が必要です。
一人でも反対する相続人がいれば、遺産分割協議は成立しません。
法定相続分の基本表
配偶者と子が相続人
配偶者:2分の1
子:2分の1
配偶者と直系尊属が相続人
配偶者:3分の2
直系尊属:3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1
配偶者がいない場合
第1順位の子、第2順位の直系尊属、第3順位の兄弟姉妹が、それぞれの順位で相続します。
同じ順位の相続人が複数いる場合は、原則として均等に分けます。
ただし、兄弟姉妹については、父母の双方を同じくする兄弟姉妹と、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹で相続分が異なる場合があります。
たとえば、異父兄弟・異母兄弟がいる場合です。
この場合、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1になります。
代襲相続とは
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その人の子が代わりに相続人になる制度です。
代表的なのは、次の2つです。
子の代襲相続
兄弟姉妹の代襲相続
子の代襲相続
亡くなった方の子が、亡くなった方より先に死亡している場合、その子、つまり亡くなった方から見た孫が代襲相続人になります。
例
亡くなった方:父
父の子:長男はすでに死亡
長男の子:孫A、孫B
他の相続人:次男
この場合、本来は長男と次男が相続人になるはずでした。
しかし、長男は父より先に亡くなっています。
そのため、長男の子である孫A、孫Bが、長男の代わりに相続人になります。
この場合の相続人は、次男、孫A、孫Bです。
孫Aと孫Bは、長男が受けるはずだった相続分を2人で分けます。
子の代襲相続では、孫がすでに亡くなっている場合、その下の世代であるひ孫に再代襲することがあります。
つまり、直系卑属については、さらに下の世代へ代襲が続く可能性があります。
兄弟姉妹の代襲相続
兄弟姉妹が相続人になる場面で、その兄弟姉妹が亡くなった方より先に死亡している場合、その兄弟姉妹の子、つまり甥・姪が代襲相続人になります。
例
亡くなった方:叔父
叔父には配偶者なし、子なし、父母も死亡
兄:存命
妹:叔父より先に死亡
妹の子:甥A
この場合、相続人は兄と甥Aです。
甥Aは、亡くなった妹が受けるはずだった相続分を代わりに取得します。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続は、原則として甥・姪までです。
甥・姪がすでに亡くなっている場合、その子まで再代襲することはありません。
ここは、子の代襲相続と大きく違う点です。
相続放棄と代襲相続の関係
相続放棄をした場合、その人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、相続放棄をした人の子が代襲相続するわけではありません。
ここは誤解されやすい点です。
たとえば、亡くなった方の長男が相続放棄をした場合、長男の子、つまり孫が長男の代わりに相続人になるわけではありません。
代襲相続が起きるのは、主に本来の相続人が被相続人より先に死亡している場合、相続欠格、廃除などの場合です。
相続放棄は代襲相続の原因ではありません。
長年連絡を取っていない兄弟姉妹がいる場合
相続では、長年連絡を取っていない兄弟姉妹であっても、法律上の相続人になることがあります。
たとえば、亡くなった方に配偶者はいるが、子がいない。
父母もすでに亡くなっている。
この場合、兄弟姉妹が相続人になります。
たとえ何十年も連絡を取っていなくても、関係が悪くても、所在が分からなくても、法律上の相続人であれば、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意がなければ成立しません。
そのため、連絡を取っていない兄弟姉妹がいる場合でも、戸籍をたどって相続人であることを確認し、住所の手がかりを探す必要があります。
住所確認には、戸籍の附票や住民票などを確認することがあります。
ただし、相続人と連絡が取れない場合、相続人が行方不明の場合、相続人間で争いがある場合には、家庭裁判所での手続きや弁護士への相談が必要になることがあります。
身寄りのない叔父さん・叔母さんが亡くなった場合
「身寄りがない」と思っていた叔父さんや叔母さんが亡くなった場合でも、法律上の相続人がいることがあります。
たとえば、叔父さんに配偶者も子もいない。
父母も祖父母もすでに亡くなっている。
この場合、叔父さんの兄弟姉妹が相続人になります。
その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥・姪が代襲相続人になることがあります。
つまり、甥・姪の立場であっても、叔父・叔母の相続人になる場合があります。
ただし、甥・姪が相続人になるのは、あくまで兄弟姉妹の代襲相続としてです。
甥・姪が常に叔父・叔母の相続人になるわけではありません。
子、父母、兄弟姉妹の状況を戸籍で確認したうえで判断します。
相続人が本当に誰もいない場合には、相続財産清算人の選任や特別縁故者への財産分与など、家庭裁判所が関係する手続きになることがあります。
このような場合は、通常の遺産分割協議とは異なる対応が必要です。
婚姻関係のない内縁の配偶者・愛人は相続人になるのか
婚姻届を出していない内縁の配偶者や、交際相手、いわゆる愛人は、原則として法定相続人にはなりません。
長年一緒に暮らしていたとしても、生活を支えていたとしても、法律上の婚姻関係がなければ、配偶者としての相続権はありません。
そのため、内縁の配偶者や交際相手に財産を残したい場合は、遺言書を作成しておくことが重要です。
遺言書があれば、法定相続人ではない人に財産を遺贈することができます。
ただし、配偶者や子など、遺留分を持つ相続人がいる場合には、遺言で全財産を交際相手に遺贈したとしても、遺留分侵害額請求の問題が生じる可能性があります。
一方で、相続人が誰もいない場合には、内縁の配偶者などが特別縁故者として財産分与を申し立てる余地がある場合もあります。
ただし、これは当然に相続人になるという意味ではありません。
家庭裁判所の手続きが必要であり、事情によって判断されます。
遺言書がある場合、相続人はどうなるのか
遺言書がある場合、原則として遺言の内容に従って相続手続きを進めます。
ただし、遺言書があるからといって、相続人調査が不要になるわけではありません。
なぜなら、次のような確認が必要になるからです。
遺言者が亡くなっていること
遺言書に記載された相続人や受遺者が誰か
遺留分を持つ相続人がいるか
遺言書に記載されていない財産があるか
遺言書の方式に問題がないか
遺言執行者がいるか
遺言によって財産を取得する人が法定相続人とは限りません。
たとえば、遺言書で「全財産を内縁の妻に遺贈する」と書かれていれば、内縁の妻は法定相続人ではありませんが、受遺者として財産を取得する可能性があります。
一方で、子や配偶者など遺留分を持つ相続人がいる場合には、その人たちの遺留分を侵害する内容になっている可能性があります。
この場合、遺言そのものが当然に無効になるわけではありません。
ただし、遺留分を侵害された相続人から、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人に最低限保障されている相続上の取り分のことです。
亡くなった方は、遺言によって自分の財産を誰に渡すかを決めることができます。
しかし、家族の生活保障や相続人間の公平の観点から、一定の相続人には最低限の取り分が認められています。
これが遺留分です。
遺留分を持つ人は、主に次の人です。
配偶者
子
孫などの代襲相続人
父母などの直系尊属
一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。
兄弟姉妹の代襲相続人である甥・姪にも、遺留分はありません。
ここは非常に重要です。
たとえば、亡くなった方に配偶者も子も父母もおらず、相続人が兄弟姉妹だけの場合、遺言で「全財産を友人に遺贈する」とされていれば、兄弟姉妹は原則として遺留分を主張できません。
遺留分の割合
遺留分の割合は、相続人の構成によって変わります。
直系尊属だけが相続人の場合
遺産全体の3分の1
それ以外の場合
遺産全体の2分の1
ここでいう「それ以外の場合」とは、配偶者や子が相続人に含まれる場合などです。
具体例で見ていきます。
例1 妻と子2人がいる場合の遺留分
亡くなった方に妻と子2人がいる場合、法定相続分は次のとおりです。
妻:2分の1
子全体:2分の1
子1人あたり:4分の1
このケースでは、遺留分全体は遺産の2分の1です。
各人の遺留分は、法定相続分に2分の1をかけて計算します。
妻の遺留分:2分の1 × 2分の1 = 4分の1
子1人の遺留分:4分の1 × 2分の1 = 8分の1
つまり、遺言で全財産を第三者に遺贈すると書かれていた場合でも、妻は4分の1、子はそれぞれ8分の1を遺留分として主張できる可能性があります。
例2 配偶者と父母がいる場合の遺留分
亡くなった方に子がなく、妻と父母が相続人になる場合、法定相続分は次のとおりです。
妻:3分の2
父母全体:3分の1
父母それぞれ:6分の1
このケースでは、遺留分全体は遺産の2分の1です。
妻の遺留分:3分の2 × 2分の1 = 3分の1
父の遺留分:6分の1 × 2分の1 = 12分の1
母の遺留分:6分の1 × 2分の1 = 12分の1
例3 父母だけが相続人の場合の遺留分
亡くなった方に配偶者も子もおらず、父母だけが相続人になる場合、直系尊属だけが相続人です。
この場合、遺留分全体は遺産の3分の1です。
父母が2人ともいる場合は、3分の1を2人で分けます。
父の遺留分:6分の1
母の遺留分:6分の1
例4 兄弟姉妹だけが相続人の場合
亡くなった方に配偶者も子も父母もおらず、兄弟姉妹だけが相続人になる場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、遺言書で全財産を第三者に遺贈すると書かれている場合でも、兄弟姉妹は遺留分を請求できません。
この点は、兄弟姉妹が相続人になるケースで特に重要です。
兄弟姉妹に財産を渡したくない場合や、特定の人に財産を残したい場合には、遺言書の重要性が高くなります。
遺留分侵害額請求とは
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます。
現在の制度では、遺留分を侵害された場合に、当然に不動産の共有持分を取り戻すというよりも、金銭で請求する形になります。
たとえば、父が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残して亡くなったとします。
相続人は長男と長女。
この場合、長女には遺留分があります。
長女は、長男に対して、自分の遺留分に相当する金銭を請求できる可能性があります。
ただし、遺留分侵害額請求には期限があります。
権利行使を検討する場合は、早めに専門家へ相談する必要があります。
遺言と遺留分の関係
遺言書は、相続対策として非常に重要です。
ただし、遺留分を持つ相続人がいる場合、遺言書を書けばすべて自由に決められるというわけではありません。
たとえば、次のような遺言があるとします。
全財産を長男に相続させる
全財産を内縁の妻に遺贈する
全財産を特定の団体に寄付する
このような遺言も、方式が整っていれば有効になる可能性があります。
しかし、配偶者や子など遺留分を持つ相続人がいる場合には、遺留分侵害額請求が問題になることがあります。
一方で、相続人が兄弟姉妹だけの場合には、兄弟姉妹に遺留分はありません。
そのため、兄弟姉妹以外の人に財産を残したい場合、遺言書の効果は非常に大きくなります。
相続人調査はどのように行うのか
相続人調査は、戸籍を順番に確認して行います。
相続人調査の基本は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めることです。
現在の戸籍だけでは、相続人を確定できないことが多いです。
なぜなら、戸籍は結婚、離婚、転籍、養子縁組、戸籍の改製などによって変わるからです。
出生から死亡までの戸籍をたどることで、次のような事実を確認します。
子がいるか
前婚の子がいるか
認知した子がいるか
養子縁組をしているか
離婚歴があるか
本籍地が移っているか
死亡している相続人がいるか
代襲相続が発生しているか
兄弟姉妹がいるか
甥・姪が相続人になるか
相続人調査の流れ
相続人調査は、一般的に次の流れで進めます。
まず、亡くなった方の死亡の記載がある戸籍を取得します。
次に、その戸籍から一つ前の戸籍を確認します。
転籍や婚姻、戸籍改製があれば、さらに前の戸籍をたどります。
これを出生時の戸籍までさかのぼります。
出生から死亡までの戸籍がそろうと、子がいるかどうか、養子縁組や認知があるかどうかを確認できます。
子がいない場合には、父母や祖父母など直系尊属の生死を確認します。
直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹を確認します。
兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子である甥・姪を確認します。
最後に、相続人となる人の現在戸籍を取得し、相続開始時点で生存していることを確認します。
必要に応じて、住所確認のために戸籍の附票や住民票を確認します。
相続人調査で確認する主な書類
相続人調査では、主に次のような書類を確認します。
被相続人の戸籍謄本
被相続人の除籍謄本
被相続人の改製原戸籍
被相続人の住民票除票
被相続人の戸籍の附票
相続人の現在戸籍
相続人の住民票
死亡している相続人がいる場合、その人の死亡の記載がある戸籍
代襲相続人がいる場合、その関係を確認できる戸籍
兄弟姉妹が相続人になる場合、父母の戸籍や兄弟姉妹関係を確認できる戸籍
家庭裁判所の案内でも、相続放棄などの手続きでは、相続人の順位によって必要となる戸籍の範囲が変わり、第2順位・第3順位の相続人では、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍や、死亡している子・直系尊属・兄弟姉妹に関する戸籍が必要になる場合があるとされています。
法定相続情報一覧図との関係
相続人調査を行った結果をもとに、法定相続情報一覧図を作成することがあります。
法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を一覧にした図です。
法務局で法定相続情報一覧図の保管と写しの交付を受けることで、その後の相続手続きで戸籍一式の提出を簡略化できる場合があります。
預貯金の解約、不動産の相続登記、相続税申告などで利用されることがあります。
法務局は、法定相続情報証明制度について、相続人本人のほか、委任を受けた代理人による申出もでき、資格者代理人には行政書士も含まれると案内しています。
ただし、法定相続情報一覧図は、相続人を確定するための戸籍確認が前提です。
そのため、戸籍の収集と読み取りが重要になります。
よくある具体例
事例1 亡くなった父に妻と子がいる場合
父が亡くなり、母と子2人がいる場合です。
この場合、相続人は母と子2人です。
父の父母や兄弟姉妹は相続人になりません。
法定相続分は、母が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1です。
ただし、相続人全員が合意すれば、母がすべて相続するという遺産分割も可能です。
事例2 亡くなった夫に子がいない場合
夫が亡くなり、妻はいるが子はいない場合です。
この場合、まず夫の父母が存命かを確認します。
父母が存命であれば、相続人は妻と父母です。
父母がすでに亡くなっていて、祖父母もいなければ、兄弟姉妹が相続人になります。
つまり、子がいない夫婦の場合、配偶者だけが相続人になるとは限りません。
この点は非常に重要です。
「夫婦に子がいないから、当然に妻が全部相続する」と思っていると、実際には夫の兄弟姉妹や甥・姪の協力が必要になることがあります。
事例3 連絡を取っていない兄弟が相続人になる場合
亡くなった方に配偶者はいるが、子はいない。
父母もすでに亡くなっている。
この場合、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。
たとえ長年連絡を取っていなくても、法律上の相続人であれば、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
連絡先が分からない場合には、戸籍の附票などから住所を確認することがあります。
ただし、連絡を拒否されている場合、争いがある場合、所在不明の場合には、別の法的手続きが必要になることがあります。
事例4 叔父さんが亡くなり、甥・姪が相続人になる場合
叔父さんが亡くなった。
叔父さんには配偶者も子もいない。
父母もすでに死亡している。
叔父さんの兄弟姉妹も一部亡くなっている。
この場合、叔父さんの兄弟姉妹が相続人になります。
すでに亡くなっている兄弟姉妹がいる場合には、その子である甥・姪が代襲相続人になることがあります。
そのため、「叔父さんには身寄りがない」と思っていても、戸籍を調べると甥・姪が相続人になる場合があります。
事例5 内縁の妻に財産を残したい場合
長年一緒に暮らしている内縁の妻がいる。
しかし、婚姻届は出していない。
この場合、内縁の妻は法定相続人にはなりません。
財産を残したい場合には、遺言書を作成しておくことが重要です。
ただし、亡くなった方に子や法律上の配偶者がいる場合、遺留分の問題が生じる可能性があります。
そのため、内縁関係がある場合の相続対策は、遺言書だけでなく、遺留分や他の相続人との関係も含めて検討する必要があります。
事例6 前婚の子がいる場合
再婚している方が亡くなった場合、前婚の子も相続人になります。
現在の配偶者との間の子だけでなく、前婚の子も法律上の子であれば相続人です。
たとえば、亡くなった夫に現在の妻と、前婚の子1人、現在の妻との子1人がいる場合、相続人は現在の妻、前婚の子、現在の妻との子です。
前婚の子と長年連絡を取っていない場合でも、相続人であることに変わりはありません。
遺産分割協議には、その前婚の子の参加が必要です。
事例7 再婚相手の連れ子がいる場合
再婚相手の連れ子は、当然には相続人になりません。
法律上の親子関係がないからです。
ただし、養子縁組をしていれば、養子として相続人になります。
たとえば、夫が再婚し、妻の連れ子と養子縁組をした場合、その連れ子は夫の相続人になります。
一方、養子縁組をしていない場合、その連れ子は夫の法定相続人にはなりません。
財産を残したい場合は、養子縁組や遺言書を検討する必要があります。
事例8 遺言で一人に全部相続させると書かれていた場合
父が「全財産を長男に相続させる」という遺言書を残して亡くなった。
相続人は長男と長女。
この場合、遺言書が有効であれば、原則として長男が財産を取得します。
しかし、長女には遺留分があります。
そのため、長女は長男に対して、遺留分侵害額請求をする可能性があります。
遺言書がある場合でも、相続人調査と遺留分の確認は重要です。
事例9 兄弟姉妹だけが相続人で、遺言がある場合
亡くなった方に配偶者も子も父母もいない。
相続人は兄弟姉妹だけ。
遺言書には「全財産を友人に遺贈する」と書かれていた。
この場合、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、兄弟姉妹は原則として遺留分侵害額請求をすることができません。
兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言書の有無が非常に大きな意味を持ちます。
まとめ
相続手続きでは、まず誰が相続人になるのかを正確に確認する必要があります。
配偶者は常に相続人になります。
子がいれば、子が第1順位の相続人になります。
子がいなければ、父母などの直系尊属が第2順位の相続人になります。
子も直系尊属もいなければ、兄弟姉妹が第3順位の相続人になります。
子が先に亡くなっている場合には、孫が代襲相続人になることがあります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、甥・姪が代襲相続人になることがあります。
内縁の配偶者や交際相手は、原則として法定相続人にはなりません。
兄弟姉妹には遺留分がありません。
相続人調査は、戸籍を出生から死亡までたどって確認する必要があります。
相続は、見た目の家族関係だけで判断すると誤ることがあります。
「子どもはいないから妻だけが相続するはず」
「兄弟とは何十年も会っていないから関係ないはず」
「内縁の妻だから当然に相続できるはず」
「身寄りがない叔父だから誰も相続人はいないはず」
このような思い込みが、実際の相続手続きで問題になることがあります。
相続手続きを進めるときは、まず戸籍を確認し、法定相続人を正確に整理することが大切です。
お忙しい場合も、内容に応じてオンラインでご相談いただけます
相続手続きの内容によっては、オンライン面談や郵送を活用しながら進めることが可能です。
ご相談内容に応じて、本人確認書類の確認や、必要書類のご提出をお願いしております。
また、内容によっては、対面でのご説明や書類の原本確認をお願いする場合があります。
お仕事やご家庭の都合で移動時間を取りにくい方も、まずはお気軽にお問い合わせください。
